プライバシー保護の運用を考える

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プライバシーガバナンスで考える要素を整理する

(作成 2022/08/09、更新 2022/08/15)

プライバシー保護を実現するには、体制やプロセスを社内に構築し、仕組みとして機能させることが重要になります。

 

この記事では、経産省総務省が公開している「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.2」*1を参考に、自社のプライバシーガバナンスを考えるとしたら何を考慮する必要があるのかを、整理したいと思います。

 

・考慮の抜け漏れやおかしな点

・他社の取り組みに関する情報提供

などありましたら、コメント欄でお知らせいただけると幸いです。

 

 

考える要素の全体像

大きく「ポリシー(方針)」と「プラクティス(実践)」の2つに分けて整理しています。

  • ポリシー(方針)
  • ラクティス(実践)
    • ガバナンス
      • 体制
      • レビュープロセス
      • 外部監査
    • 周知・浸透
      •  教育
      • ツール

 

ポリシー(方針)

<指針・憲章>

組織として大事にすること、ユーザーとの約束ごとなど、どういう状態(ゴール)を目指すのかを宣言した文書です。

外部向け

多くの企業では、個人情報について、プライバシーポリシーや個人情報保護方針を定めていると思います。

より広い「パーソナルデータ」について、パーソナルデータ憲章/指針を定める会社も増えてきています。

内部向け

個人情報やパーソナルデータの取り扱いに関する、社内規程などが該当します。

 

ガイドライン/ブック>

上記の指針・憲章を具体的に記した文書です。

外部向け

文字ベースで抽象的な指針・憲章を、イラストや図解、具体例を交えて解説したもので、代表例がプライバシーセンターになります。

privacyops.hatenablog.com

内部向け

社内規程を実務に落としたルールブックなどが該当します。

 

ラクティス(実践)

<ガバナンス>

体制

プライバシーガバナンスを機能させるための体制を作る。

  • 責任者
    • CPOやDPOなど、社内におけるプライバシー保護の責任者を定めます。
  • プライバシー保護組織
    • プライバシー専任の組織を作ることもあれば、法務やセキュリティが兼任するする場合もあります。
  • 内部連携
    • 事業部門やプロダクト部門とどのように連携するか。
  • 外部連携
    • 研究機関や業界団体、弁護士といった社外の有識者とどのように連携するか。
レビュープロセス

リスクチェックやPIA(プライバシー影響評価)を実施する。

  • どの工程で(Where, When)
    • ex. 企画、開発、テストなど
  • どの組織が(Who)
    • ex. 法務、セキュリティ、社外の有識者
  • 何を(What)
    • ex. パーソナルデータの
      • インプット(入力)
      • スループット(処理)
      • アウトプット(出力)
  • どのような基準で(How) 
  • どのような頻度で(How often)
    • ex. 発生ベース、Qごと、1年に1度
外部監査

社外の三者から客観的な評価を得る。

  • 有識者会議
  • 諮問委員会
  • ユーザーへの意識調査

 

<周知・浸透>

定めたルールやプロセスが遵守されるには、各従業員への意識づけや、現場に定着させるための取り組みが必要です。

教育
  • 基礎
    • eラーニングやテストで、プライバシー保護に関する前提知識を揃えます。
  • 応用
    • それぞれの事業部門やプロダクト部門に特化した内容で、発展的な内容の研修や勉強会を開催します。
ツール
  • ドキュメント
    • 普段の業務で使用する資料やマニュアルに盛り込み、従業員が日常的にプライバシー保護を意識する機会を作ります。
  •  チェックシート
    • レビュープロセスとは別に、現場の従業員がプライバシーリスクを点検できるチェックリストを用意します。
  • 開発キット
    • 社内向けのAPISDKを提供し、開発現場が自然とプライバシー保護を実現できる状態を作ります。

*1:「DX時代における企業のプライバシーガバナンスガイドブックver1.2」を策定しました (METI/経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2021/02/20220218001/20220218001.html